その者は何処から来て何処へ行くのか。薔薇子爵の世界観と感想【あらすじ】

男性とも女性とも言える美しさを持つ絵画から飛び出してきたのではないかと思わせる主人公がヨーロッパをさすらい様々な人々と交流する薔薇子爵についてレビューしたいと思います。

 

薔薇子爵について

作者:大和和紀

巻数:全1巻

 

あらすじ

18世紀末のヨーロッパ。退廃的なムードの漂うフランスに薔薇子爵ことギデオンが現れます。男性でも女性でもない浮世離れした美しさを纏う性を超越したその存在はある者には天使に、またある者は妖精に、そしてまたある者は悪魔に見えるといいます。

果たしてギデオンとは何者なのでしょうか。

 

みどころ

見どころはなんと言っても表紙を飾る美しい金髪に金の瞳を持つ薔薇子爵、ギデオンです。

ヨーロッパを舞台に4編に渡って登場する主人公ギデオンはその人間離れした容姿で様々な人間を虜にします。

ある時は街から逃げてきたワケあり女性を、ある時は切ない目で海を見つめる画家を、ある時は子を亡くし悲しみに打ちひしがれる未亡人を、そしてある時は秘密警察に追われる青年を、ギデオンが望もうと望むまいと周りの人間は次々とその不思議な魅力に夢中になっていきます。

それはもちろん読者も同じです。

 

言葉の一つ一つ、行動の一つ一つがギデオンの美しく妖艶な魅力を引き出し、そして同時に悲しくもさせます。人間の容姿を持ちながら人間とは違う時間を生きるギデオンは決してひとところに留まることが出来ません。唯一の友はオレンジを食べる黒い犬オランジュだけです。

それでもギデオンは生きていきます。

自らが何者であるかをひしひしと感じながら、それでもギデオンは歩むことを辞めません。

 

こんな人は是非読んでみて

まずはやはり大和和紀ファンの皆さんです。

画業50年を超える大ベテランの描く耽美で幻想的な世界は華麗なタッチも相まって本当に絵画のような美しさがあります。そして少女漫画を愛する方にも是非読んでいただきたいです。

最近の作品はほとんど読み尽くしたという方や毛色の違う作品も読んでみたいと考えている方には特におすすめです。全1巻という手軽さで空いた時間に読むことが出来ますし、単純な愛の物語とも言い難い奥の深さがきっと皆さんの心を虜にすると約束します。

 

さいごに

私の大好きな作品薔薇子爵は絵は少し古いと感じられるかもしれません。

タッチはもちろんヨーロッパが舞台ですから日本とは違う文化的背景もベースになっています。

 

けれどそれでも愛についての考え方は万国共通、むしろ愛とは何であるかというものを考えるきっかけになると思っています。

 

この作品が一人でも多くの方に読んでいただけることを祈っています。

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