盲目の超能力者と孤児とのなぜかせつない物語、『白眼子(はくがんし)』を読んだ感想【あらすじ】

『超能力』モノって言うとどんなジャンルのマンガにしても、何か現実離れした世界の話だったり、ドタバタの(ラブ)コメディーだったりを想像したりしますよね。

 

今回はそういった世界観とは一線を画す、人間愛に溢れたドラマ『白眼子』をレビューします。

 

白眼子について

作者:山岸涼子

巻数:全1巻

 

簡単なあらすじ

作品の舞台は終戦直後の北海道から始まります。冬の小樽の市場の隅で捨て子のように凍えていた、自分がどこにいるかも分からない独りぼっちの小さな少女が盲目の『白眼子(はくがんし)』と呼ばれる男性に拾われて、その日から白眼子とその姉などと一緒に生活を始めます。

 

『白眼子』は人の未来を見たり、亡くなった人の声を聞いたり、行方不明の人の安否を正確に言い当てたり出来る能力を持ち、さまざまな方面から依頼者が来る超能力者(的確に当たる占い師的な人)です。

 

この盲目の超能力者に関わる様々な人間模様を拾われた少女の目線(成長しながらその目線は変遷してゆく)で描いた物語です。

 

みどころ

この作品は、成長していく少女と白眼子とその姉(白眼子のマネージャー的存在)との関係、戦争で家族をなくした人の苦悩、強欲な人間の業などいろいろな場面が出てきます。それぞれの人間模様のエピソードも面白いです。しかし、それらのエピソードに付随している少女の気持ちの動きや、境遇に対するシンパシーを持たずにはいられない部分も見どころだと思います。白眼子と少女の心の交流も大きな見どころです。

物語の途中で少女の生い立ちや、なぜ盲目の白眼子が少女を見つけることが出来たのか分かってくるのですが、ここも作者の作品作りの素晴らしさが光る構成になっていて、よくある『超能力』モノのとは別の境地があるように思えます。

そして、少女が大人になるまでの長い時間の物語が1冊の本に凝縮されているのに、時代をはしょった感じや無理矢理な感じが一切なく、何か壮大な長編を見たような感じになるのも不思議なところです。

さらに特筆すべきはこのマンガ全体に醸し出されている『静寂感』だと思います。画面構成や描線の細さによるところも大きいと思いますが、とにかく物語の場面が荒れていても静寂感がある!

『白眼子』は読むと不思議な読後感が残る一冊だと思います。

 

こんな人におすすめ

  • 乾ききった人間関係に疲れて、人間の温かさを再認識したい!と思う人
  • 人生について考える、ちょっとしたきっかけを求めている人
  • 人を信頼する『安心感』を感じてみたい人
  • 一風変わった超能力モノを読んでみたい人
  • 人間愛のある物語で感動したい人

 

こんな方たちに是非とも読んでいただきたいです!

 

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