バレエ少女達の葛藤と成長を描いた物語「舞姫 テレプシコーラ」を読んだ感想

女の子なら一度はきっと憧れたことのあるバレエ。今回は、優雅で煌びやかなイメージであるバレエの世界を目指す少女達の、葛藤や成長を描いた「舞姫 テレプシコーラ」をレビューしたいと思います。

 

舞姫 テレプシコーラについて

作者:山岸凉子

巻数:全10巻

 

あらすじ

この作品の主人公は、バレエ教室の娘である小学5年生の六花(ゆき)です。六花には2歳年上で、バレエの才能もある優秀な姉、千花がいます。六花は、千花には敵わないと思いながらも、バレエが好きでマイペースに練習に取り組んでいました。

ある時、六花にはバレリーナになるには不利となる身体的な問題があることがわかります。

また、姉の千花も、大役に選ばれた大きな舞台で大怪我をしてしまい、思うように踊ることが出来なくなってしまいます。

大きな壁にぶつかった姉妹が、それぞれに悩み、苦しみ、それぞれが出した答えに、胸が熱くなります。

 

バレエの世界にどっぷりはまれる!

この作品の見どころは、まずは何と言っても美しいバレエの世界を堪能できるところです。

美しい動きや、衣装、普段のレッスン風景、専門的な知識などが細かく描写されており、読み終わる頃にはすっかりバレエに詳しくなっていることでしょう。

そして、美しいだけでは無い、現実のバレエの世界の厳しさをしっかり描いているところも素晴らしいです。六花は生まれつきの身体的な問題や、優秀な姉やハイレベルなライバル達との差に苦しみます。

姉の千花は、プロバレリーナを目指し、ずっとエリートコースを突き進んできたのに、突然、アクシデントによる大怪我によってその道を閉ざされてしまいます。

特にこの千花が、踊れなくなってしまった自分に価値を見い出せず、生きる気力を失っていく過程が本当に切ないのです。悩み苦しんで、自分なりにバレエ以外の道探して生きていこうとする千花が、最後にあっけなく選んだ道は死でした。まだほんの少女だった千花の絶望を思うと涙が止まりません。

 

山岸凉子さんの人間の描写力が素晴らしい

この作品の作者である山岸凉子さんは、他にも数々の名作を描かれていますが、とにかく人間の内部を描くのが飛び抜けて上手い漫画家さんであると思います。人間のぐちゃぐちゃした醜い部分等、人間らしい感情が繊細に描かれています。ストーリーもきちんと作り込まれていて、物語が進む程に引き込まれていきます。

バレエファンの人はもちろん、そうで無い人にも、女性にも男性にも楽しめる大人のための漫画だと思います。

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