男の視点から見るヤングレディースマンガ「九月病」の感想【あらすじ付】

 

九月病について

作者:シギサワカヤ

巻数:全2巻

 

あらすじ

シギサワカヤが過去に同人誌で発表した作品と新たに書き下ろした作品を合わせたオムニバス形式の作品。話の主な内容は実の兄妹である伊坂 広志(いさか ひろし)と伊坂 真鶴(いさか まつる)が互いに愛し合い、親の死を切っ掛けに肉体関係に及んでいくと言うドロッとした話です。またその兄妹の歪んだ関係に翻弄されていく周りの登場人物達の関係もサイドストーリーとして含まれています。

 

ここが魅力!

男でも引き込まれる愛憎マンガ

まず切っ掛けとしては同人誌即売会でシギサワカヤの作品に出会ったことが切っ掛けでした。全体的にシギサワカヤの作品は男女のドロドロした関係を題材にした作品が多く精神を削られることが多々ありますが、それらを覆す様な綺麗な画力と時折見せるギャグの様なコミカルなシーンの対比がとても面白く男性の方でも抵抗なく読むことが出来る作品だと思います。

 

派生していくシギサワカヤ作品

またこの作品はオムニバス形式となっていますが、シギサワカヤの別の作品である「溺れるようにできている」や「ファムファタル 〜運命の女〜」に出る登場人物も少しだけ関係しています。もしシギサワカヤの作品を気に入ったなら、これらの作品を集めてどのように繋がっていくのか調べてみるのもいいかもしれません。(まあ、そこまで行くならかなりのオタク度かもしれませんが)

 

少年マンガではあり得ないミドコロ

「九月病」の主な特徴ですが、主人公である伊坂 広志は実の妹の伊坂 真鶴と数年前から肉体関係を重ね、また職場の同僚である海老沢 碧(えびさわ みどり)とある切っ掛けで強引に肉体関係を結び、あげくの果てに最後まで妹との関係を続けながらも海老沢 碧に甘えると言うどっち付かずのクソヤローに見えます。しかし彼も妹との関係を続けることに罪悪感を覚えながら、それを忘れるために清水 早千(しみず さち)と言う同郷の恋人と付き合い婚約までしますが、その結婚式の一週間前に清水 早千は高校時代に密かにつき合っていた元英語教師の清水 耕輔(しみず こうすけ)と駆け落ちしてしまいます。ある意味伊坂 広志が海老沢 碧と無理矢理関係を持ったのも甘えから来る衝動ではないでしょうか。この様に少年・青年マンガではあり得ない様な男女のドロッとした関係が描かれていますが、他にも脇役である伊坂 広志の友人の原口 ハヤト(はらぐち はやと)や兄妹同士の肉体関係を知る隣に住む主婦の田中 沙織(たなか さおり)、また伊坂 真鶴の援助交際相手の冴木(さえき)などなかなか味のあるシーンを見せたりもします。

 

他にもいるぞ最低男

主人公の伊坂 広志を見てみると確かに最低な男なのですが、実の兄妹同士の肉体関係に罪悪感を持ちながら、婚約していた女性からこのような仕打ちを受けたならば、私ならば女性恐怖症になってしまうかもしれません。まさに少年・青年マンガでも扱っていないミドコロの一つだと思います。もし「九月病」を気に入ったという人ならば、アメリカの映画「卒業」を見てみるのも面白いと思います。

「卒業」の有名なシーンに教会でヒロインが主人公とは違う別の男と結婚の誓いの口づけをしようとする際に、いきなり主人公が式場に乱入してヒロインの新婦を奪って逃げていくという場面があります。よくこのシーンはパロディとしても使われ、この映画作品がロミオとジュリエットの様な純愛メロドラマ作品に思われがちですが、実際見てみるとこの「卒業」の主人公も「九月病」の伊坂 広志と同じくらい最低な男だということが分かります。もしどちらかの作品をご覧になった方や両方見てない方は「九月病」と「卒業」の両方見てみるのも面白いかと思います。

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